上映劇場

それでも人は
なお夢を抱く

失意のうちにある二人が出会い
互いの人生でかけがえのない存在となる――
香港の四季と共に描かれる人生の四季
そして未来への物語

Rinraku no hito

2020年2月1日(土)
新宿武蔵野館ほか
全国順次公開!

香港中を涙と希望で包んだ感動作!

厚生労働省社会保障審議会特別推薦

NEWS

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2022年7月27日(水)
『淪落の人』DVD、武蔵野オンラインストア&新宿武蔵野館でも販売決定!
2022年7月8日(金)
『淪落の人』いよいよDVD発売決定!
2021年6月22日(火)
【新宿東口映画祭in武蔵野館】6/7(月)『淪落の人』トークイベントが開催されました!
2021年5月26日(水)
武蔵野館【新宿東口映画祭】にて上映&トークイベント決定!
2020年6月29日(月)
オリヴァー・チャン監督からも素敵な写真が届きました!

INTRODUCTION

『淪落の人』は創作ではあるものの、監督が実際に街で見かけてインスピレーションを受けた光景や、母親の介護体験など、現実の断片を組み合わせた物語。

「境遇や文化が違っても、誰もが、愛や欲望、夢など、人生における美しいものを求めているのでは?」

多くの問いかけや、想像・考察を経て作られた本作は、香港の四季に人生の四季を重ねながら、人が夢を抱くことの大切さを描いていきます。

主演は香港を代表する演技派俳優のアンソニー・ウォン。本作にほれ込み、なんとノーギャラにて出演。半身不随という難役を見事にこなし、香港電影金像奨をはじめとする数々の主演男優賞を受賞。監督は本作がデビュー作のオリヴァー・チャン。香港において、今最も注目を集めている新鋭の女性監督です。主演女優は映画初出演のフィリピン人女優クリセル・コンサンジ。共演は「ピンポン」のサム・リー(李璨琛)、「風の輝く朝に」のセシリア・イップ(葉童)。

本作は第38回香港電影金像奨をはじめとする数多くの賞に輝き、第14回大阪アジアン映画祭・観客賞、第21回ウディネ・ファーイースト映画祭など、国際的な映画祭も席巻!

STORY

突然の事故で半身不随となってしまった男、リョン・チョンウィン(アンソニー・ウォン)。妻とは離婚、息子とも離れて暮らし、人生に何の希望も抱けないまま、ただただ日々を過ごしていた。妹ジンイン(セシリア・イップ)との関係もうまくいかず、慰みは唯一の友達である元同僚のファイ(サム・リー)との会話と海外の大学に通う一人息子の成長だけ。

そこに若いフィリピン人女性エヴリン(クリセル・コンサンジ)が住み込み家政婦としてやってくる。広東語が話せない彼女に最初はイライラを募らせたチョンウィンだったが、片言の英語で会話をしながらお互いに情が芽生えていく。やがて、エヴリンが生活のためにやむを得ず写真家への道を諦めたものの、今でも心の中で夢を追い求めていることを知ったチョンウィンは、彼女の夢を叶える手助けをしようと思い始めるが…。

PRODUCTION NOTES

人生のどん底にある人は、
一体どうやってその先の人生に
向き合えばいいのか。

本作の撮影時、「これは実話?それともフィクション?」と多くの友人に聞かれました。モデルとなった特定の人物がいるわけではありません。でも、よく考えてみると、創作ではあるものの、現実の断片を組み合わせた物語と言えるのかもしれません。

私が幼い頃、母は事故で脊髄を損傷し、十数年間を車椅子で過ごしました。姉は進学を諦めて介護の役割を担い、いつしか私は家族3人を支えるべく勉強に励む毎日。あの頃の生活は苦しいものでしたが、今思えば人生の最も幸福な日々だったのかもしれません。この個人的な経験がもととなり障害者と介護者の物語を撮りたいと思うようになり、そうした人たちに特別な関心をよせ、観察し続けてきました。

そして数年前のある日、家の近所である光景を見ました。フィリピン人女性が車椅子の後ろに乗り、車椅子には中年男性が座っている。彼らが路上を走り去っていく時、彼女の長い黒髪は風になびいていた。2人とも微笑みを浮かべ、若干の甘い雰囲気すら漂わせている。私はとっさに「それはマズいでしょう」と思いました。でも考えてみれば、本当に“マズい”のは私のこうした考え方のほう。背景や文化がまったく異なる見知らぬ2人が、数奇な運命の末にめぐり合い、互いの人生の中で最も親しい人になる…それはきわめて美しいことです。

この出来事に重要なインスピレーションを得て、そうした2人の物語を描こうと決意しました。彼らの境遇や関係性を借りて「愛や欲望、夢など、人生における美しいものを抱く権利は、誰にでもあるのでは?」と問いたかったのです。弱い立場にある人がそうしたものを求めると、なぜ現実味がないだとか、さらには不快とさえ思ってしまう人もいるのか。人生のどん底にある人は、一体どうやってその先の人生に向き合えばいいのか。

こうした多くの自問や想像、考察を経て、2人の“淪落の人”の物語がだんだんと形作られました。そしてついには、彼らが風の中を走る姿は、私の頭の中だけの存在ではなくなり、皆さんに温かさを伝えられる感動的な作品になったのです。

ーオリヴァー・チャン


女性監督 オリヴァー・チャンの初長編作品、
製作はフルーツ・チャン
資金援助を得て撮影をスタート

オリヴァー・チャンは、2015年に香港浸会大学で“映画テレビ及びデジタル媒体”の修士号を取得。在学中は主に短編作品を制作していた。

2017年、第3回“劇映画初作品プロジェクト”の資金援助を得て、『淪落の人』の撮影は順調にスタート。監督はこう振り返る。「最初にプロジェクトでの受賞を知った時は、もちろん感謝しました。特に、第3回の援助額は初回の時よりもかなり増えていたからです。でも実際に予算表を作り始めると、資金的に非常に厳しいことに気づきました。幸い、経験豊富なフルーツ・チャン監督が製作を担当し、撮影時には資金の運用に特に注意してくださいました。気をつけないと、すぐ予算を超えてしまうので、予算内に収まるように多くの取捨選択が必要だったのです」。


『淪落の人』は、『琵琶行』の一節から
どん底にいる人生だからこそ、
縁を大切にすべきではないか

新人や素人を多く起用

タイトルの『淪落の人』は、白居易の「琵琶行」の一節“同じく是、天涯淪落の人。何ぞ必ずしも、曾て相職らんや”がもとになっている。監督はこの一節と主人公2人の共通点を指摘する。“2人は共に人生のどん底にいる。たとえ経歴は異なっていても、縁あって出会った以上、その縁を大切にすべきではないか”と。

初の長編作品で、監督は基本に立ち返り人を中心に描きたいと考えた。本作はマイノリティのための発言を意図したものではない。だが、そうした人々と触れあう機会が増え、理解が進む助けになればと願っている。

境遇や人種、文化が違う人たちにも、それぞれの感情や夢があり、家族や友人がいる。彼らにも夢を追い、渇望するものを求める権利はあることを伝えるため、必然的に作品中で彼らの苦しい状況を重点的に描くこととなった。


金像奨で主演男優賞を獲った
アンソニー・ウォンが無償出演
演技の奥深さに絶賛の声

アンソニー・ウォン

香港電影金像奨の最優秀主演男優賞をすでに2度受賞していた名優アンソニー・ウォン。演技の幅が広く、演じた役柄も多岐にわたっている。今回挑戦したのは、半身不随により肩より下が動かない役。厳格な身体コントロールを求められる状況での奥深い演技が絶賛され、第25回香港電影評論学会大奨、香港映画監督会、第38回香港電影金像奨で、それぞれ最優秀主演男優賞に選ばれた。

監督は脚本の執筆時から、チョンウィン役にアンソニー・ウォンをと考えていた。まだ何の資金もなかったが、監督は熱意と誠意を胸に、脚本と自身の簡単なプロフィールをアンソニーのアシスタントへ送信。ほどなく興味を示す返信が届く。外国人家政婦たちの物語が香港映画で語られることは非常に少ないため、アンソニーはこの作品にぜひ参加したいと考えたのだ。予算の都合で支払えるギャラが限られることを監督が率直に伝えたところ、彼は拒まないどころか、ギャラは要らないと申し出る。その心意気に監督は大いに感激した。

役作りのため、アンソニーは障害者の生活の映像を見たり、身体障害者協会を自ら訪ねたりして、車椅子生活にどんな困難があるかを観察。自身の母親がかつて病気で車椅子の生活を送っており、その世話をしていたことも、真に迫った演技へのプラスになった。


ヒロイン役探しは難航
クリセル・コンサンジ、
スクリーンデビューで人々を魅了する

クリセル・コンサンジ

クリセル・コンサンジは、香港滞在が十年を超えるフィリピン人女優。彼女は舞台経験が豊富だが、映画出演はこれが初めて。だがスクリーンデビュー作で天賦の才能を発揮、繊細な演技で多くの観客を感動させた。

ヒロイン役選びには9か月近い時間がかかり、大変苦労した。当初はネットとエージェントを通して公募、フィリピンの映画会社とも連絡を取った。フィリピンへ出向いて探すことも考えたが、資金の関係で断念。最後に、フィリピン人向けのコミュニティ新聞に募集情報を出したところ、大きな反響があり、300人以上がオーディションに参加。最終的にクリセルの出演が決まった。

クリセルは映画初出演作で、主演男優賞を獲っている名優と共演することになったのだが、まったく気後れはしなかった。というのも、彼女は香港の芸能界をあまり知らず、共演相手のすごさを意識していなかったのだ。これが彼女にはプラスに働き、おかげでプレッシャーをそれほど感じずに済んだ。

彼女は舞台出身だが、監督の教えを受けてから、映画のリズムにすぐに適応し、リアルで自然な演技を見せた。これが評価され、香港映画監督会から最優秀新人賞に選ばれ、第38回香港電影金像奨では最優秀新人賞を受賞している。


サム・リー、セシリア・イップ
助演陣が描く友情と肉親の情
新進俳優ヒミー・ウォンの演技にも注目

サム・リー、セシリア・イップ

本作ではサム・リーとセシリア・イップが、チョンウィンの友人と妹の役をそれぞれ務め、感動的な友情と肉親の情を見せている。サム・リーが演じたファイは義理人情に厚い。彼が中国本土から香港に来たばかりの頃、チョンウィンの世話になり、以来、友情を深めてきた。一方、セシリア・イップが演じる妹ジンインは、若い頃に兄と対立。兄妹の間には、わだかまりが残っていたが、エヴリンのおかげで関係が修復し始める。チョンウィンと彼ら2人との関係は、ほんのわずかしか描かれていないが、見る人の心を動かすには十分だ。サム・リーはこの役で第37回香港電影金像奨の助演男優賞にノミネートされた。

また、チョンウィンの息子役を演じたのは新進俳優のヒミー・ウォン。アンソニー・ウォンとの共演は、大部分がパソコン画面を通してのものだったが、「アンソニーの演技に感化され、すぐに役柄に入れました。大先輩と共演できて光栄でした」と感激を語っている。一方のアンソニーも、ヒミーの演技を高く評価し、絶賛している。

淪落の人1
淪落の人2
淪落の人3

CAST & STAFF

アンソニー・ウォン(黃秋生)

リョン・チョンウィン(梁昌榮)役

1961年9月2日生まれ。1982年、ATVの俳優養成所へ入り、1985年に映画デビュー。数々の映画に出演し、1993年「八仙飯店之人肉叉焼包」の鬼気迫る演技で、香港電影金像奨の最優秀主演男優賞を初受賞。「ビースト・コップス 野獣刑警」(1998)の演技でも観客を震撼させ、第18回香港電影金像奨で最優秀主演男優賞を再び受賞した。このほか、台湾の金馬奨では最優秀助演男優賞を3度受賞している。映画・テレビ・舞台のいずれでも評価されている香港を代表する演技派俳優のひとり。

本作ではチョンウィン役を演じ、香港電影金像奨で3度目の最優秀主演男優賞を受賞。第25回香港電影評論学会大奨で最優秀男優賞、香港電影監督会の最優秀主演男優賞、香港脚本家協会の演技賞(男性部門)も受賞した。

主な出演作:
「八仙飯店之人肉饅頭」(1993年)
「ビースト・コップス 野獣刑警」 (1998年)
「ザ・ミッション 非情の掟」(1999年)
「インファナル・アフェア」(2002年)
「頭文字D THE MOVIE」(2005年)
「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝 (2008年)
「イップ・マン 最終章」(2013年)
「ザ・スリープ・カース」(2019年)


クリセル・コンサンジ

エヴリン・サントス役

1984年9月2日生まれ。マニラ生まれの歌手で舞台女優。現在は子供の芸術的才能を育てる教育者事業も行っている。幼い頃から舞台に出演。2008年に香港へ移住後、香港ディズニーランドで舞台パフォーマンスを開始。2017年に香港の公共放送局・香港電台のドラマ「獅子山下2017」で次第に知名度を上げた。映画初出演作となった『淪落の人』で、香港電影監督会と第38回香港電影金像奨で最優秀新人賞を受賞している。


サム・リー(李璨琛)

ファイ(輝)役

1975年9月27日生まれ。本作『淪落の人』の製作を務めたフルーツ・チャン監督にスカウトされ1997年に「メイド・イン・ホンコン」で俳優デビューし、第17回香港電影金像奨の最優秀新人賞に輝いた。若手人気スターとして着々とキャリアを重ね、2002年には松本大洋原作、曽利文彦監督、宮藤官九郎脚本の「ピンポン」に出演し窪塚洋介、ARATAらと共演。また「無問題2」ではナインティナインの岡本隆史と共演しており、日本での人気も高い。台湾の金馬奨で主演男優賞に2度ノミネートされている。

『淪落の人』のファイ役で、第38回香港電影金像奨の助演男優賞にノミネートされた。

主な出演作:
「メイド・イン・ホンコン」(1997年)
「ジェネックス・コップ」(1999年)
「無問題2」(2001年)
「ピンポン」(2002年)
「愛・革命」(2018年)


セシリア・イップ(葉童)

リョン・ジンイン(梁晶瑩)役

1963年8月3日生まれ。「レスリー・チャン 嵐の青春」(1982年)で映画デビュー。1984年、チョウ・ユンファ主演「風の輝く朝に」でヒロインを演じた。

「表錯七日情」(1983)と「婚姻勿語」(1991)で、第3回と第11回の香港電影金像奨の最優秀主演女優奨を受賞。台湾ドラマ「薔薇之恋〜薔薇のために〜」(2003年)、「求婚事務所」(2004年)にも出演している。

主な出演作:
「レスリー・チャン 嵐の青春」(1982年)
「風の輝く朝に」(1984年)
「五福星」(1984年)
「ふたつの時、ふたりの時間」(2001年)

テレビドラマ:
「薔薇之恋〜薔薇のために〜」(2003年)
「求婚事務所」(2004年)


ヒミー・ウォン(黃定謙)

リョン・チュンイン(梁俊賢)役

1995年10月27日生まれ。香港の若手俳優。香港浸会大学の演劇学部を卒業。在学中に「點五步」(2016)で映画デビュー。その後も多くの短編作品、映画、ドラマに出演。テレビ局で編集助手を務めたこともある。テレビドラマ「前度」(2017)、「VR駆魔人」(2018)、「陰関道」(2018)などに出演している。


監督・脚本

オリヴァー・チャン(陳小娟)

1987年生まれ。香港中文大学グローバルビジネス学部を卒業。その後、香港浸会大学で“映画テレビ及びデジタル媒体”について修士課程で学ぶ。在学中には短編自主映画を多数制作。

「啊囉哈!(アロハ!)」で、第2回マイクロシネマ「創+作」支援プロジェクト(音楽篇)の最優秀製作金賞と最優秀脚本賞を受賞。ゴールデン・フラワー・アワード(金花国際映画祭)2016では、最優秀作品賞、最優秀脚本賞を受賞した。

また、「児女」はフレッシュウェイブ国際短編映画祭2015、イタリアのサレント国際映画祭、台湾国際女性映画祭、スイスのシュニット国際短編映画祭などにノミネート。イギリスのポーツマス国際映画祭では、最優秀非英語短編賞を受賞している。

卒業後に制作会社を設立。映画やテレビの脚本を担当、CMの監督も務める。

2017年に第3回 劇映画初作品プロジェクトで企画が評価され、初の長編監督作品となる『淪落の人』の撮影資金を獲得。この作品で、第25回香港電影評論学会大奨の最優秀脚本賞、香港映画監督会の最優秀新人監督賞、香港脚本家協会の推薦脚本賞、第13回アジア・フィルム・アワードの最優秀新人監督賞、および第38回香港電影金像奨の最優秀新人監督賞を受賞している。


製作

フルーツ・チャン(陳果)

香港の映画監督。製作、脚本も手がける。その作品は世界の大型映画祭に何度もノミネートされ、数々の賞を受賞。香港電影金像奨の最優秀監督賞と最優秀脚本賞、ならびに台湾の金馬奨の最優秀監督賞を何度も受賞している。本作では屋台レストランの店主役で出演もしている。

代表作は「メイド・イン・ホンコン」(1997)、「花火降る夏」(1998)、「リトル・チュン」(1999)、「ドリアン ドリアン」(2000)、「ハリウッド★ホンコン」(2001)、「ミッドナイト・アフター」(2013)、「三人の夫」(2018)など。